今月16日の夜、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が、その対象地域を全国に拡大することとなり、岡山も含まれることになりました。今はこれ以上の感染を増やさないよう、私たち一人ひとりが行動を慎んでいかなければなりません。
しかしながら、そのような中にあってもご不幸があれば葬儀をしなければなりませんし、この間の年忌法事はどうすれば良いのか?というご相談も増えております。
各ご家庭によって状況も違いますし、やり方も様々にあるかと思いますが、お寺として考える葬儀・法事の実施方法を以下に記しますので、参考にしていただければ幸いです。
◆葬儀について
葬儀には通常、枕経・通夜・葬儀・仕上げという4つの勤めがあります。これらを行う上で大切なことは、基本的には国の指導と同じく、風邪の症状や発熱、だるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方は参列を厳に慎むこと、また、元気な方であっても咳エチケット(マスク着用)や手の消毒等の基本的な感染予防を徹底すること、そして、「3つの密(密閉・密集・密接)」を避けることです。葬儀においては、この「3つの密」を避けることが最も困難に感じますが、下記のような方法で対応できるかと思います。
1、枕経
本来の「枕経」とは、臨終に際して僧侶が読経するものでしたが、現在では亡くなってからご遺体を棺に納める前に行います。したがって、その場に居合わせる方は限られた身内と僧侶だけであり、不特定多数が集まる場ではありません。
なるべく広い部屋で、換気をしっかり行うとともに、咳エチケット(マスク着用)や手の消毒などの基本的な感染症対策を実施した上であれば、枕経は通常通り行うことが出来るでしょう。
2、通夜
本来の「通夜」とは、葬儀の前夜、一晩を通じて故人と伴に過ごす儀のことですが、現在は社会便宜上「通夜式」と言われる一定の時間と場所を設定し、そこへ故人と親交のあった方々に集まってもらい、菩提寺僧侶もそこへ出向いて読経、弔問者には焼香をしてもらうというのが一般化しています。しかし、このやり方はまさに「密集」にあたり、感染リスクも高くなってしまいます。
これを避ける方法としては、「通夜式」を持つのではなく、弔問をしても良い時間を少し長めに設定し、その時間内に各自バラバラに弔問していただくのが良いでしょう。なお、弔問時には部屋の換気、咳エチケット(マスク着用)や手の消毒などの感染症予防対策を行うことはもちろん、お焼香をお済みになられた方から順に速やかにお帰りいただくようにしましょう。
通夜振る舞い(弔問客を振舞う食事)をする場合も、その場で食べるのは避け、各自持って帰っていただくよう手配するのが良いかと思います。
3、葬儀
現在の状況において、多数が集まる一般葬の実施は控えざるを得ません。一方で、生前に親交のあった方々が最後のお別れを告げる場がないというのも困ります。したがって、葬儀自体は近親者のみで行い(密葬)、告別式は状況が落ち着いた後で別に行う(本葬、あるいはお別れ会)のが良いでしょう。
ちなみに、最近は普段においても「家族葬」と言われる少人数で行う葬儀が増えていますが、家族葬を行った後日に次々と弔問客が来宅され、対応に苦慮することがしばしばあります。相当のご高齢で、弔問客がいないことが確実な故人様であればともかく、人間は誰しもが社会性を持っていますので、一般の弔問を断る家族葬はなるべく避けるべきかと思います。生前にお世話になった方々が故人へ最後の別れを告げる場を設けることは、喪主家の大切な勤めの一つなのです。
4、仕上げ
仕上げとは、故人の火葬が終り、お骨上げを済ませ、遺骨が式場(あるいは自宅)に戻ってきた際に行う読経です。別に「繰り上げ初七日」と言ったり、岡山南部では「戻看経(もどりがんき)」と言ったりもします。
主に家族親族で行うものですが、現在の状況下では、お骨上げの前にご親族(特にご高齢の方)にはお帰りいただいても失礼には当たらないかと思います。
なお、仕上げには通常、お斎(会食)が付きますが、現状それは慎むべきでしょう。通夜振る舞いと同様に、折膳のようなお弁当をお持ち帰りいただくよう手配するのも良いかと思います。
葬儀については、以上のように基本的な感染症予防対策を行うとともに、工夫を施すことで「3つの密」を回避し、感染リスクを低減することが出来ます。もちろんそれで100%大丈夫というわけではありませんが、しかし葬儀をしないわけにもいかないのが実情です。葬儀社様とも相談しながら、参考にしてみて下さい。
5、「今は無理しないで良いよ」という選択肢をつくる
最後にもう一つだけ葬儀を行う上での注意をお伝えしたいと思います。それは「遠方からの弔問はなるべく避ける」ということです。
緊急事態宣言が出されている現状において県をまたいで弔問すること、特に東京や大阪などの「特定警戒都道府県」に指定されている自治体にお住まいの方のご弔問については、出向く方も迎える方も不安かと思いますし、今の状況下においては辞退を申し上げても失礼には当たらないかと思います。
しかしながら、葬儀は「最後のお別れ」であり、何ものにも代えがたい貴重な儀式です。だからこそ上記したような葬儀の工夫を施しましょう。たとえ親や子といった近しい間柄の場合であっても、後日にお別れの場を設けてあげることで、今は無理しないで良いよ、後日ゆっくりお別れをしてね、という判断、選択肢をつくることができるのです。
◆年忌法事について
年忌法事は、故人様のご命日までに行うのが本来良いとされますが、このような状況下では親族が集まることはできません。したがって、下記のような方法が考えられます。
1、少人数、家族だけで実施する
ご親族には今回に限り参拝を辞退いただき、ご家族だけで実施する。なお、ご自宅で行う場合は、なるべく部屋の換気を良くし、咳エチケット(マスク着用)や手の消毒等の感染症予防対策を施しましょう。当山から参拝にあがる僧侶もマスク着用の上、拝ませていただきます。
2、お位牌をお寺に預け、年忌供養をしてもらう
お寺にお位牌をご持参いただければ、住職が年忌供養を行います。後日、拝んだお位牌と開眼した年忌塔婆をお渡ししますので、お墓参りをして下さい(一緒に参ることもできます)。
3、どうしても親族が集まって法要を行いたい場合は・・・
大勢が集まる法要は、状況が落ち着くまでは延期せざるを得ません。安心できる時を迎えてからやりましょう。当然、故人様のご命日を過ぎてしまうことになりますが、故人様のご命日には当山僧侶が出向き、ご自宅ないし墓前で読経供養申し上げます。ご相談下さい。
その他、各ご家庭によって様々なご事情があるかと思いますので、さらに詳しくは当山へお問合せいただければと思います。
皆様にはどうかお気をつけてお過ごし下さい。ご健康を至心にお祈り申し上げます。
長泉寺 住職 宮本龍門 拝