2月15日、当山玉佛堂において、釈尊のご遺徳を讃嘆する「涅槃会」を奉修しました。

真言宗では本来、涅槃会に際して「涅槃」、「羅漢」、「遺蹟」、「舎利」という四座に分けて行う「常樂会(四座講式)」を奉修すべきところですが、それをすべてやるとなるとあまりにも長時間に及んでしまうため、当山では本来四座それぞれでお唱えされる「和讃」を中心にお唱えし、いわば常楽会のダイジェスト版のような形で奉修させていただいております。
ご参拝いただきました方々には、ありがとうございました。
2月2日(日)、毎年恒例の「節分 星まつり」を奉修しました。
檀信徒皆様が産まれながらに持つ本命星と、今年一年の当たり星である当年星、さらには寿命や福徳をつかさどる元晨星に供養を捧げる「星供養法会」を厳修。ご縁ある寺院僧侶方やお参りの皆様と一緒に「般若心経」、本尊「頂輪王咒(真言)」を唱え、さらには運気を上げると言われる釜鳴護摩供養を行いました。
法会後は縁起物である獅子舞を「備前太鼓唄弘西普及会」の皆様に奉納いただくとともに、「鬼は外!福は内!」と豆まきを行い、除災招福、開運厄除けを祈願いたしました。また、厄除けのために御供いただいたお菓子やお餅などは、参拝者皆様に分けてお持ち帰りいただき、一部は児童養護施設「若松園」様にご寄付させていただきました。
考えてみますと、限りなく広がる宇宙の中に地球という母なる星が存在していて、我々が今こうして生きているというのは大変不思議なことです。地球が太陽と少しでも近ければ、あるいは遠ければ、現在とはまた違う環境の地球となっており、我々が今と同じように存在しているかどうかはわかりません。さらに言えば、地球と太陽との距離だけでなく、銀河系、太陽系の星たちにはすべて引力というエネルギーが備わっており、その実に絶妙なる力関係、めぐり合わせによって地球は地球として存在できているわけです。
それはまさに「密」なるものによる仕業で、その仕組みを科学的に分析してみても、経緯や確率(途方もなく奇跡的な数値となるでしょう)はわかるのでしょうが、そこにどのような意味があるのか?どのような意図や意志に基づくのか?なんてわかろうはずがありません。ただ、我々はその恩恵をありのままに享受し、今こうして生きているわけで、その密なる力の有難さたるや、何ものにも代えがたいものであります。
古くから続く星供養ですが、それはまさにその星の奇跡がこれからも続いて下さい、もし悪いようなら良い巡りになって下さい、と祈願する法会であります。大変おもしろいものでございます。
1月21日、就実大学の浅利尚民先生を講師にお迎えし、寺子屋文化講座vol.49を開催しました。
今回のテーマは「池田綱政」で、当山長泉寺の山号にその足跡が残る「薬園」、および「白須賀観音」についてのご講演いただきました。林原美術館へ長年勤務をされていた浅利先生は、綱政公自筆の文書や側近が残した資料等の調査を深められており、スライドでそれらを紹介しながら詳しく解説下さいました。
映像もあって大変わかりやすく、参加者皆さんも喜んでおられましたが、個人的にも伝承と史実との整合性をはかる上で、大変勉強になった次第です。ありがとうございました。
次回の寺子屋文化講座は、開講第50回ということで、神崎宣武先生を特別ゲストにお招きします。開催日時は、3月25日(火)19時~20時半、となっております。詳しくは追ってお知らせいたしますが、多くのご来場が予想されますし定員も限られますので、ご参加を希望される御方はお早めに当山までご連絡下さい。
阪神淡路大震災より30年を迎える1月17日、早朝より人道援助宗教NGOネットワーク(RNN)で活動をともにする諸宗教の皆様が当山本堂へご参集され、同震災物故者を供養する慰霊祭を奉修されました。
発災時刻である5時46分、開式とともにRNN委員長の永宗幸信師(天台宗本性院住職)によるご先導で一同黙祷を捧げ、以降は当山僧衆による真言宗の作法に基づく法会を厳修。我々が「般若理趣経」を唱え奉る中、参拝者皆様にはお焼香をいただき、式の最後にはRNN事務局長の黒住宗道師(黒住教教主)がご挨拶をされました。
私としましては、当山本尊薬師如来をはじめ諸佛諸菩薩、諸天善神の御前にて、同震災で亡くなられた方々を悼み、その御霊安らかなれと弔い申し上げるとともに、被災者皆様が今日まで歩んでこられた道のりの切なく、険しきことを深く心に致しながら、皆様のこれからがどうか恙ないものとなりますよう至心にご祈念させていただきました。
宗旨宗派の異なる方々が集まった同慰霊祭でしたが、まさに心をひとつにしてご供養させていただけたのではないかと存じます。
なお、その様子はRSKイブニングニュース様にて報道いただいてますので、下記にリンクをご紹介させていただきます。
新年あけましておめでとうございます。
本年は巳年でございます。
蛇といえば、苦手な人も多い一方で、古来より世界中で信仰されてきた存在です。
蛇は手足がなく、鱗をまとってはニョロニョロと動き、舌をペロペロする姿がどうも気持ち悪い、というのは我々人間、霊長類が進化の過程で持つようになった本能なのだそうですが、その畏怖心こそが蛇を聖なる存在とし、我が国においても「神の遣い」として信仰してきた大きな理由です。それはまた、「自然」というものに対して、その恵みを享受しつつも、ときにもたらされる天災への危機感であり、同時に人間の傲慢さに対する慎み、自制心とも言えるでしょう。
さて当山では、昨日の令和7年元旦17時30分より、昨年同日に起きた「令和6年能登半島地震」一周忌に当たり、犠牲物故者追悼の法要を奉修し、併せて被災者皆様の安寧と能登地方の早期復興を至心にお祈りさせていただきました。冒頭に「新年あけましておめでとうございます」と記したものの、能登の人々のことを想いますと、あまりめでたいという気持ちにはなれない本年の正月でございます。大切な方を亡くされた人々の悲しみ、発災から一年経っても不自由な暮らしを続けられている能登の多くの人々の努力を想い、ただただ手を合わせる次第です。被災者皆様を心より応援しております。
本年はまた、今月17日に「平成7年 阪神淡路大震災」より30周年忌、さらに6月29日には「昭和20年 岡山空襲」より80周年忌となります。いずれも当山にて追悼会を奉修させていただく予定です。
また世界に目を向けてみますと、現在もウクライナや中東では武力衝突が続いており、悲しみは増えるばかりです。我が国が位置する東アジアも情勢不安が広がっています。
我が国自身も、物価高騰や長引く経済停滞のほか、コミュニティの衰退、人間関係の希薄化などによって、生きづらく、悲しい思いをする人々が増えているように感じております。
今、お寺に出来ることは何か?と様々に思いめぐらせながら、試行錯誤しながらの私ですが、何より一番は檀信徒各家各人をはじめ、地域の人々、お寺に関係されるすべての皆様と心通わせ、お寺が皆様の心のよりどころとなることが大切だと考えております。本年も様々にお寺行事を開催するほか、至心に檀務を勤めて参りたいと存じます。
来週1月8日には、当山本尊薬師如来の新年最初のご縁日ということで、毎年恒例の「大般若法会」を奉修しますので、ぜひ多くの方々にご参拝いただければ幸いです。
なお、祈祷札のお申込みは、準備の都合上、前日(1/7)までにお願いいたします。
最後になりましたが、どうか皆様が笑顔で心豊かな一年をお過ごしいただけるようお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
本年もよろしくお願いいたします。
令和7年正月二日
龍門拝
11月16~17日、長泉寺杖心会は、表題の巡礼を奉修しました(参加23名)。
今回の旅は、我が国に古くより続く「神仏習合」に関連して「日本酒」、「清酒」のルーツを訪ねることを目的に、大阪府河内長野市の天野山金剛寺様、さらには奈良県奈良市の菩提山正暦寺様、桜井市の大神神社様などを参拝しました。
天野山金剛寺様は、かつて長泉寺の住職であった泉(旧姓)光俊師が入寺され、当時の天野山座主(住職)・曽我部俊雄師(金剛流御詠歌流祖)の後嗣として曽我部姓を継承、後に同山第77世座主となられたという法会があるお寺です。 また、前座主の堀智範猊下には、長泉寺中興40周年(平成11年)の際に総本山仁和寺第47世御門跡として御親教いただき、さらには開山500周年大法会(平成21年)でも御導師をお勤め賜りました。
金剛寺は、南北朝時代の武将楠木正成にゆかりがあり、南朝の行宮(天皇の仮住居)が置かれるなど、歴史的に政治の重要拠点でもありました。加えて鎌倉期より僧坊酒「天野」という澄酒が造られており、それは太閤秀吉が愛飲するなど時の武将たちに大変な人気を博したと伝わります。同山境内にそびえる多宝塔(重文)は平安期のもので、大阪府下最古の木造建造物となっており、その他にも現存最古の写本『延喜式神名帳』(国宝)や、『六曲屏風 紙本著色日月四季山水図』(国宝)など、数多くの文化財が保存されます。それは比叡山や根来など、戦国期に焼き討ちに合う寺院が多い中で、「天野が飲めなくなると困る」という理由で戦火をすべて免れたからでした。
杖心会一行は、金剛寺到着後まずは先師霊廟へお墓参りをし、般若心経、並びにご詠歌を奉納。続いて本尊大日如来・不動明王・降三世明王(いずれも国宝)を祀る金堂(重文・鎌倉期)でご法楽を捧げ、堀智真座主様よりご法話を賜りました。
その後、天野酒製造元の「西條合資会社」で昼食、並びに酒蔵見学。その日の夕方には奈良市内へ移動し、夜は楽しい親睦会を持ちました。 翌日は早朝より東大寺(今回は特別な許可をいただいて真言院様も内拝)、興福寺を参拝した後、今旅の目的の一つである菩提山正暦寺へ参りました。
菩提山真言宗の大本山である正暦寺は、「日本清酒発祥の地」として知られる寺院です。
神仏習合が深まった室町期、同山僧侶は山内に祀られる神や天部に供えるため、「菩提泉」という清酒を醸造しました。同酒は、「菩提酛」と呼ばれる醸造法で、現在の日本酒造りの原点とも言われています。 岡山の人は「菩提酛」の名をしばしば聞くことがあるかと思いますが、それは真庭市勝山にある辻本店(「御前酒」で有名)様が菩提酛でお酒造りをされているためでしょう。現在、奈良においても現地の各蔵元が力を合わせ、かつての造り方と同様の醸造法で菩提泉を復刻しています。
一行は正暦寺塔頭の福寿院客殿で同山大原弘煕執行長様よりお寺の歴史と菩提泉についてお話を賜った後、本堂前でご法楽をあげさせていただきました。紅葉に染まる境内は大変美しく、心地よい参拝となりました。
昼食後は今旅の最終地である大神神社へ。
古来より神の山として信仰を集める「三輪山」に鎮座する大神神社は、「古社中の古社」、即ち我が国最古の神社と伝承されます。杉の木がご神木(三諸杉)で、よく蔵元の軒先につるされている杉玉も、三輪山が発祥です。
ご祭神の大物主神は国家の守護神でもありますが、『日本書紀』には、杜氏の高橋活日命が天皇への献酒する際に「この神酒は 我が神酒ならず 倭なす 大物主の 醸みし神酒 幾久 幾久」と詠んだとあり、酒造りの神としても信仰されています。大物主神のご神力が美酒を造ったことから、現在も全国の酒造者やメーカーが多くお参りされています。
また近世まで大御輪寺という神仏習合の神宮寺があり、その本堂は現在、同社の若宮「大直禰子神社」拝殿となっています。明治期の神仏分離令によって、本尊十一面観音像は近くの聖林寺へ、日光月光両菩薩像は正暦寺へ移されました。鎌倉後期より、真言宗の影響が極めて強い「三輪流神道」が盛んだった同地では、「神道護摩」や「神道灌頂」など、神道と仏教がほぼ完全に習合した儀式も行われていました。
我々一行は、大神神社本殿を参拝した後、同社の神官様より解説をいただき、旧大御輪寺本堂である大直禰子神社へもお参りをしました。
我が国古来の宗教性や文化に触れ、楽しくも学びの多い参拝となりました。ご参加いただいた皆様にはありがとうございました。
隔月開催の「長泉寺寺子屋文化講座」vol.48は、岡山県・市より文化奨励賞を受賞されている郷土史家・朝森要先生をお招きし、11月1日に開催しました。
今回は、「黒田官兵衛と備中高松城の水攻め」と題し、室町期に西日本最大の繁華街とも呼ばれた備前福岡との縁があり、姫路城主から福岡城主となった黒田家と、その中でも秀吉に付き天才軍師と呼ばれた黒田孝高(官兵衛)についてお話をいただきました。
御年91歳となられる朝森先生は、お身体の衰えが当然ありながらもとてもしっかりとした口調でお話を下さり、参加者の皆様からも大きな拍手をいただきました。
「長泉寺寺子屋文化講座」は、来年3月に開講50回目を迎えます。特別ゲストを招いての記念講演を予定していますので、皆様にはどうぞお楽しみに!